

丸紅は創業153年の歴史と伝統ある会社です。創業の年の1858年(安政5年)は、「日米修好通商条約」の締結や「安政の大獄」があった年で、まさに歴史のターニングポイントに当たります。その後、分割や合併、幾多の困難や紆余曲折がありましたが、丸紅はこうした厳しい時期を乗り越え、152年という長い伝統を守り、止まることなく前進してきました。それは、弛まぬチャレンジとイノベーションを通じて、時代の変化を先取りし、自らのビジネスモデルを転換してきたからです。
海外の投資家とのミーティングで、「総合商社とは何ですか」という漠然とした質問をよく受けます。昔は、「世界を舞台にミサイルからカップラーメンまでありとあらゆる商品の流通に絡む、即ちトレードを行っている企業」、というような説明で済ませることができましたが、今ではこのような説明だけではとても総合商社のビジネスのあり方を説明しきれないほど、総合商社ビジネスは高度化、複雑化しています。
丸紅は、商社機能を最大限に発揮できる分野で、川上から川中・川下に至るそれぞれのステージで投資を行い、強固なバリューチェーンを構築することにより、投資とトレード双方からの収益を追求しています。このようなビジネスモデルは、お客様のニーズを理解し、取り扱う商品に精通し、ビジネスの進め方を熟知しているからこそ可能となるものであって、個々の投資におけるキャピタル・ゲインのみを追求する欧米型の投資ビジネスとは決定的に異なっています。当社の中に培われた「自己変革」のDNAがある限り、私たちは次の時代に向けて、持続的な成長を続けていけるものと確信しています。

次に、お話したいことは、丸紅の経営理念についてであります。
丸紅の経営理念は、『社是「正・新・和」の精神に則り、公正明朗な企業活動を通じ、経済・社会の発展に貢献する、誇りある企業グループを目指す』というものです。
社是の「正・新・和」は漢字3文字で構成されますが、一つ目の「正」とは高い倫理観を持ち、高潔かつ公正な企業活動を行うこと、言わば「コンプライアンス」を表します。ここでいうコンプライアンスとは単に法令遵守に止まるものではなく、企業グループとしての信用、信頼を得るために、グループに属するそれぞれの人達が誇りをもち、公私に亘り高い倫理観を持つことを示します。丸紅では、「正義と利益のどちらかを取らねばならない状況に遭遇したら、迷わず正義を貫け」との明確な方針を掲げております。
二つ目の「新」とは、弛まぬ自己変革を図り、飛躍に向けてチャレンジすることを表します。
社会や経済を取り巻く環境は常に進化しており、同時にお客様のニーズも常に変化しています。お客様の期待に応えるためには常に時代の流れを読み、社員一人ひとりがお客様重視の立場で現状に満足することなく常に新しいことにチャレンジして、満足度の高い商品・サービスの提供を心がけなければなりません。繰り返しになりますが、丸紅が150年以上の長きに亘って存続しえたのは、絶えず積極的に新しい分野への挑戦を繰り返し、ビジネスモデル・組織、あるいは企業文化を変革してきたからに他なりません。
三つ目の「和」とは、一つは社会・環境との共生などステークホルダーと調和した企業活動を行うことです。丸紅は、企業の持続的成長の実現には、CSR即ち「企業の社会的責任」への取り組みが不可欠と考えており、CSRを重視した経営を実践することを経営戦略として、CSR活動を積極的に推進する体制・制度を整えています。そして、もう一つ、丸紅の強みである組織の団結力を表します。丸紅の最大の資産はなんと言っても、強い個、即ち「人材」ですが、その個が集合体として強い一体感を持たねば、丸紅の持続的な成長を支えていくことはできません。丸紅はこうした組織としての団結力を最大限に発揮し、ビジネスの世界で存在感を発揮する「強い丸紅」の実現を目指していきます。
この経営理念を役員・社員全員が共有することにより、丸紅固有の、「自由闊達さ」、「風通しの良さ」、「チャレンジ精神」、「大局観に基づく行動」といった企業風土が培われていると考えております。

当社では、2010年度より3カ年の新中期経営計画『SG-12』を実行しており、2年目となる今期は、史上最高益の更新となる連結純利益1,700億円という目標を掲げ、社員一丸となって邁進し、目標以上の利益を上げるべく、各分野で尽力しています。また、『SG-12』では、経営環境の変化に耐えうる強固な収益基盤と盤石な財務基盤を確立し、全てのステークホルダーの“期待を超えるパートナー”として持続的成長を実現する為に、主要施策として以下の4点に取り組み、さらに強い丸紅を目指します。
| (1) | 経営主導による人材戦略の推進 経営環境の変化およびビジネスモデルの多様化に対応すべく、私を議長とする 「HR戦略会議」を設置し、丸紅グループの人材強化を図る。 |
| (2) | 経営資源の重点配分 経済・社会の発展に貢献し、その発展を当社グループの成長につなげるべく、 「資源」「インフラ」「環境」「生活」の4分野への重点的な経営資源配分を行う。 |
| (3) | 海外市場における取組強化 新興国を中心とした海外市場の成長を取り込むべく、取り組みを強化する。 |
| (4) | 財務体質の強化、リスクマネジメントの深化 変化のスピードが速まる経営環境において経営の安定性を高めるべく、 リスクマネジメントを深化させ、財務体質を強化する。 |
学生の皆さんに特にお伝えしたいのは(1)の人材強化です。
丸紅の最大の財産は、「人」であり、実務を通した計画的な「経験」を人材強化の柱として、「処遇」「研修」と合わせた三位一体の施策を導入し、グループをあげて人材強化に取り組んでいます。
「経験」の取り組みの中で、若手社員を「早く大きく育てる」ことを目的とし、様々な施策を実施しておりますが、その中の1つの施策として、入社7年目までに必ず海外経験を積ませることとしており、若手から積極的に海外経験をさせるチャンスを与えています。若い時に様々な「経験」を積むことでより早く大きく育つと考えているからです。
丸紅にとって最も大切なものは、お客様との信頼関係です。お客さまとWIN-WINの関係を構築し、お客様から「一緒に仕事をしたい」、「一緒に仕事をして良かった」と言われる、即ち、お客さまの「期待を超えるパートナー」となる必要があります。足繁くお客さまのもとに通い、信頼関係を築きあげていく積極性のある人、そしてそのベースに明るさのある人が商社パーソンとして大成していく人だと思います。
更に、私が丸紅パーソンに求めたい資質に、豊かな国際性と協調性がありますが、それ以上にお客様の信頼を獲得していくためには、社員一人ひとりが担当分野に精通し、ナンバー1と言われるような専門性を身に付ける必要があると考えます。こう言うと、「専門バカになってしまうのでは」と懸念する声を聞きますが、これは大きな間違いで、専門性を磨いてお客さまの信頼を得られないような人は、何を任せられても成果を出せないです。
次に必要となるのが、行動力です。禅の教えの中に、「動中の工夫は静中に勝ること百千億倍」という言葉がありますが、ビジネスの世界は評論家の世界とは異なり、アクションをとる中での工夫が課題の解決に繋がります。丸紅グループに行動を伴わない評論家は要りません。行動を起こすことで、様々な分野でのプロの意見や業界の動向にアクセスし、視野を広げ、新しい発想や柔軟な発想に繋げることが重要なのです。
丸紅では人材を育成するために、若手社員に仕事をどんどん任せます。最初は小さな仕事かもしれませんが、人は仕事を成し遂げたという経験によって自信を持ち、次のもっと大きな仕事へのチャレンジ精神を駆り立てていくものです。
また、仕事を通じて成長出来るばかりでなく、ビジネスを通じて、自分の仕事が社会に役立つという実感を持つことが出来ます。例えば発展途上国のインフラ整備の分野では、その国に暮らす人々の生活を支え、その国の経済発展を手助けすることができます。エネルギー・資源開発の分野では、その国の人々だけでなく少資源国・日本のエネルギー・資源の安定供給にも貢献することができます。
そうした業務を行う上で大切になる精神として、「情熱と勇気」を持っていてほしいと考えます。何事にも前向きに、最後まであきらめずにやりぬくんだという熱い思いをもって、仕事にのめりこんでほしいと思います。自らの思いを強く持てば、目標は必ず達成できます。
丸紅では若気の至りを応援しています。志のある皆さんのチャレンジを心よりお待ちしています。


















