Freshmen Seminar #2 リベラルアーツ(日本文化)

Freshmen Seminarとは

4月から約1ヶ月間かけて行われる、丸紅の新入社員研修。その研修内容は多岐にわたり、ビジネスの基本マナーから、PCスキル、英語、リベラルアーツ(日本文化、西洋文化)、創業の地訪問など、商社パーソンとして必要な基礎知識を学んでいきます。ここでは、その新入社員研修の一部を紹介します。
また、これから就職活動に奮闘する学生達へ向けた、新入社員のメッセージもありますのでご覧ください。



リベラルアーツ(日本文化)


4月17日(火)、GINZA SIXにある「二十五世観世左近記念 観世能楽堂」に新入社員が集まりました。
この日行われたのは総合職を対象とするリベラルアーツ研修。世界で活躍するための基礎教養として、日本の伝統芸能であり、ユネスコ世界無形文化遺産でもある能を鑑賞します。
能鑑賞の研修は今年で5回目。能を鑑賞するだけでなく、能に関する講義やワークショップも行う贅沢な構成となりました。


~能を五感で感じて欲しい~


最初に行われたのは、観世流・山階彌右衛門氏による基礎講義。
まずは、能の歴史と芸能としての特徴を説明します。能は、観阿弥・世阿弥親子によって室町時代に大成した世界で最も歴史のある舞台芸術のひとつ。徳川家康をはじめ、歴代将軍に愛され、幕府の公式行事で演じられる芸能として今日まで受け継がれてきました。


江戸幕府の庇護を受けていた当時は、銀座一丁目(現在のマロニエゲート付近)に観世流の能楽堂があったといいます。その後、明治維新によって静岡県に拠点を移しますが、1970年代に渋谷区松濤に能楽堂を開場。そして、GINZA SIXのオープンに合わせ、150年ぶりに銀座に戻ってきました。

能には、「日本人」として大切な素養があると山階氏はいいます。例えば、能のストーリーには、平和を願う気持ちや、親子間、恋人同士の愛情を描いたものが多いこと、戦いの場面でも、争いごとはいけないという意思から必ず竹で作ったニセモノの刀を使うことなど、諸所に込められているのです。
「能は、時代の変化に影響されない普遍的な思いを描いています。600年以上前の日本語で演じられるため、分からない言葉もあるでしょうが、能が訴えかけていることを五感で感じ取ってください」(山階氏)

~稽古は強かれ、情識はなかれ~


次いで登壇したのは、国文学者であり、ベストセラー作家の「リンボウ先生」の愛称でも親しまれる林望氏。舞台の構造や仕組みについて分かりやすく説明してくれました。

舞台に向かって左側にある通路は橋掛りといい、能の舞台の大きな特徴。このスタイルは江戸時代になって確立されたものだそうです。舞台を囲む白い玉石(白州といいます)は水を表し、橋掛りの前にある松は、高く伸びた松の先端部分を表しています。つまり、舞台はどこか高い場所にあり、俗世間と隔てられた神聖な空間であることを表しているのです。

林氏は、世阿弥が記した「風姿花伝」についても解説。「風姿花伝」は能の心得や演技論などをまとめたもので、よく耳にする「初心忘れるべからず」もこの中に記された代表的な言葉です。
数々の名言の中から林氏が取り上げたのは「稽古は強かれ、情識はなかれ」という一節。
能の世界において、上達するためには厳しい態度で稽古に望まなければなりません。そのためには、上手な人から良いところを学び取ることが大事。それと同じくらい大事なのが、情識にならないこと。情識は強情や慢心という意味で、自分はできる、優秀だと自惚れることが上達を阻むということです。
「仕事も同じですよね。上司や先輩から良いところを学ぶことが成長に繋がります。一方で、人の悪いところが見えたときに、自分はあんなことはしない、自分はもっと出来ると思ってしまうこともあります。そうではなく、悪いところは戒めにして、人のふりを見て我がふりを直す。そういう姿勢で物事に取り組む大切さを、世阿弥は何百年も前に伝えていたのです」(林氏)

~ワークショップによる能体験~


能の基礎知識を学んだところで、観世芳伸氏、武田祥照氏に能の基本動作を教えていただきます。
まずは発声。この後で鑑賞する『船弁慶』という演目から、源義経と静御前が別れを惜しむ際の歌を実際に歌ってみます。


まずは、観世氏、武田氏によるお手本。ふたりの艶のある声が能楽堂全体に響き渡ります。その後で、歌を一節ずつに区切り、新入社員全員で挑戦。100人近くいるにも関わらず、師匠2人の足元にも及ばない声量に、思わず観世氏から喝が入ります。


「これから世界で活躍するビジネスパーソンがこれではいけない」と、声の出し方や発生の際の姿勢について指導を受けました。
また、劇中で静御前が行う泣き方の演技も教わりました。悲しみがつのり、少しうつむき、そっと手を目元にやり、涙を拭く。シンプルな動作ですが、上手く悲しみを表現出来ません。実際に挑戦することで、いかに感情表現が難しいかが良く分かります。
「もっと悲しいときは、両手を使い、両目を覆います。上司に厳しいことを言われたときには、この所作をするといいですよ(一同笑)」(観世氏)

次に、新入社員の10人が檜舞台に上がり、すり足を習います。ワークショップといえども能を教わる上での関係性は「師」と「弟子」。礼に始まり、礼に終わる、お辞儀の作法も一から教わります。


まずは武田氏がすり足を実演。足袋と舞台が擦れる綺麗な音が鳴ります。代表10人は、師匠の所作を参考にすり足に挑みますが、なかなか思うように足が前に出てきません。
綺麗な音は出せませんでしたが、本物の舞台の上で一流の指導を受けるという貴重な経験を得ることが出来ました。

~静と動の能、「船弁慶」を鑑賞~

さて、いよいよ能鑑賞です。
この日のために選んでいただいた演目は『船弁慶』。源頼朝に追われる源義経、弁慶、静御前と、平知盛の亡霊が登場します。前半は義経と静御前のしんみりとした別れがあり、後半は打って変わって、義経、弁慶と亡霊が海の上で戦いを繰り広げます。
「船弁慶は、船出、門出を祝う演目。社会という大海原へ出る新入社員の皆さんにふさわしいと思い、この演目を選びました」(山階彌右衛門氏)



舞台後方では、太鼓、大鼓、小鼓、笛が囃子を演奏。能は、どの演目でもこの4つの楽器で曲を演奏します。舞台右手は地揺。劇のナレーション部分を歌う人達で、先ほど挑戦した義経と静御前の別れの歌も彼らが歌います。
劇中には静御前が涙を流す場面があり、登場人物達の心の動きがひしひしと伝わってきます。また、薙刀を振り回す亡霊との戦いは息をのむほどの迫力で、新入社員達が舞台に釘付けとなりました。

~世界で活躍するトッププレーヤーになるために~

無事に亡霊を退治したところで終演。大きな拍手が響く中、再び山階彌右衛門氏と林望氏が登壇し、新入社員にメッセージをくれました。


英国で教鞭をふるっていたこともある林氏は、日本文化の教養を高めることの大切さを話してくださいました。
「ヨーロッパでは、一流のビジネスパーソンは皆、自分の国の伝統芸能をよく知っています。英国人ならシェイクスピアを語れますし、イタリア人はオペラを鑑賞します。皆さんも同様に、日本の伝統である能を知り、魅力を語れるようになって欲しいと思います。語学が出来ることが教養ではありません。日本人として、日本の文化を分かっていることが教養であり、アイデンティティです。今日の研修を1つのきっかけにして、折にふれ、気持ちと身なりを整えて、神聖な能の舞台を見てみてください」(林氏)

山階氏は、能がチームワークによって成り立っているものだと説明。能にはリハーサルがなく、演者それぞれがセリフ、歌、囃子、舞を覚えた上で、開演前に少しだけ打ち合わせをし、本番に臨むのだそうです。
「能は、シテと呼ばれる主役を中心に話が進みますが、舞を踊るためには歌や囃子を知らなければなりません。逆に、歌や囃子も、セリフや舞を知らなければなりません。シテ1人の力では何もできず、舞台に出る20人足らずの演者全員の力が必要なのです。会社も同じで、様々な部署の人達がいます。上司、先輩、同期の人達と協力しながら、人生という大きな演目、大きな仕事を成し遂げて欲しいと思います」(山階氏)




新入社員インタビュー


動画には、「新入社員研修の感想」、「リテラシー研修の感想」、「自分自身の就活を振り返って」、「就活生へのメッセージ」が収録されています。是非ともご覧ください。


新入社員① 永川 陽子


新入社員② 井筒 陽介


新入社員③ 河野 和也


次回は「創業の地・豊郷町訪問」の様子を紹介します。


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