What’s a “SOGO SHOSHA”

総合商社はトレードと投資で世界を「つなぐ」

総合商社は世界中の多くの企業とお互いに信頼で結ばれた「つながり」を持ち、世界中からありとあらゆるモノやサービスを供給することができます。

総合商社は長い歴史の中で多くの外国企業・日本企業と「トレード(商取引・貿易)」を通じた「つながり」を築きあげてきました。この「つながり」を通じてモノやお金だけでなく、信用や情報が流れているという点がとても重要です。

一例を挙げてみましょう。総合商社がこの「つながり」を通じて、米国企業が「肉料理に合う日本酒を探している」という情報と、日本企業が「肉料理に合う日本酒を開発した」という情報を得たとします。すると、両社との「つながり」がある総合商社が介在することによって(本来出会わなかったかもしれない)需要と供給を結びつけることができます。いわば総合商社は世界的規模のネットオークションのような存在なのです。そして新たに結びつけたトレードを通じて、総合商社は手数料などの利益を得ることができます。

つながりを武器に需要と供給をつなぐのが商社の役割

また、総合商社は、外国企業・日本企業の一部あるいは全部を買う「投資」を通じて投資先企業の意思決定に影響を与え、「つながり」を強化してきました。先の例で言えば、「肉料理に合う日本酒」を独占的に米国企業に販売すべく、総合商社は「肉料理に合う日本酒」を開発した日本企業に投資し、その経営に関与することもできます。投資からは、2通りの利益を得ることができます。第1は配当及び持分利益、つまり取引先企業の利益のうち、総合商社の投資に見合った分を受け取ることができます。第2はキャピタルゲインです。例えば100億円で買った取引先企業の価値が上がり200億円になれば、総合商社はその取引先企業を売ることで200億円‐100億円=100億円の利益を得ることができます。

最近の総合商社を巡る議論の中で「トレードと投資、どちらが大事か?」というものがあります。結論を言えばトレード・投資の間には相乗効果が働いており、この2つが車の両輪のように働くことがとても重要であり、かつ総合商社と他産業の差別化に寄与しています。例えば、銀行などの金融機関が投資を行うことも可能です。しかし総合商社はトレードから得た情報を通じて、より良い投資先企業を発見することができます。また取引先企業に投資をすることで取引先企業との「つながり」を強くし、より大きなトレードができるようになります。繰り返しになりますが、トレードと投資を組み合わせることが総合商社の真骨頂であり、逆にそれができないビジネスモデルはすぐに他社に模倣される恐れがあります。

穀物ビジネス
フィールドは日米から世界へ

総合商社の両輪であるトレード(商取引・貿易、利益は売買益や手数料等)と投資(利益は配当とキャピタルゲイン)がいかに相乗効果を発揮しているか、当社の穀物ビジネスを例に説明してみましょう。

1. トレードが良質な投資を増やし、良質な投資が更にトレードを増やす好循環

丸紅の穀物ビジネスは他の総合商社のそれと同じく、戦後の高度成長に沸く日本に海外から穀物を輸入することから始まりました。つまり最初は総合商社の両輪のうち、トレードが中心だったわけです。
その後、1967年に西日本グレーンセンター株式会社(現パシフィックグレーンセンター株式会社)を設立しました。投資を通じて日本の港湾に自社の穀物輸入基地を保有し、穀物の荷揚げ・保管・配送を円滑に行うことで、他商社との差別化を図るためです。現在、同社は岡山県水島港・熊本県八代港・鹿児島県鹿児島港に3拠点を有しています。このパシフィックグレーンセンター株式会社への投資により、丸紅の穀物輸入の安定性・効率性は高まり、顧客の信用を勝ち得た結果、丸紅の対日穀物輸入量は増加しました。総合商社の両輪であるトレードと投資の相乗効果が働き始めたのです。
輸入側である日本港湾への投資を通じて丸紅の対日穀物輸入量が増加すると、今度は輸出側である北米への投資を通じてトレードを更に拡大・安定化させる必要が生じます。そのため丸紅は1978年に米国のコロンビアグレイン社を設立しました。北米の港湾に自社の穀物輸出基地を保有し、穀物の集荷・保管・輸出を行うことで、他商社との差別化を図るためです。このコロンビアグレイン社への投資により、丸紅の北米における穀物調達力は更に拡大・安定化し、顧客からの信用が更に高まった結果、丸紅の対日穀物輸入量は一層増加しました。トレード、及び輸出国・輸入国双方での投資が互いに相乗効果を発揮し、好循環が生まれ始めました。
強調したいのは、質・量ともに優れたトレードが良質な投資を生み、良質な投資がトレードの質・量を更に高める、という好循環です。このようなトレードと投資の好循環を生み出すことが総合商社の真骨頂です。

2. ビジネスフィールドは日米だけでなく世界へ拡大

上記のような輸出側・輸入側への投資を通じて、丸紅の日米間での穀物貿易量は拡大しました。そして2000年代に入り日本全体の穀物輸入が頭打ち傾向を見せる中でも、丸紅は穀物貿易量を更に増やすべく、新興輸出国・新興輸入国への投資を進めています。代表的な投資先を2つ紹介しましょう。1つ目は新興穀物輸入国・中国の青島田潤食品有限公司という飼料畜産事業会社です。日本では港湾の穀物輸入基地を確保するために投資しましたが、中国では港湾施設の私的所有が困難なため、飼料畜産事業に投資することで穀物の流れに関与し、利益を得る狙いです(下図参照)。2つ目は新興穀物輸出国・ブラジルの港湾ターミナル会社であるテルログ社で、同社への投資を通じてブラジル産穀物の輸出拠点を確保し、穀物の集荷・保管・輸出を強化しています。

3. 日々のビジネスで培った経験と情報力で、穀物メジャー入り

「準穀物メジャーのガビロン社が売りに出されたようだ。」
業界関係者から極秘情報を聞きつけた丸紅社員は嬉しさのあまり小躍りしたといいます。ガビロン社は準穀物メジャーですが、米国における穀物保管能力は、現在ADM社に次ぐ890万トンと米国第2位の巨大穀物商社です。
丸紅は2012年5月にガビロン社買収を決断、2013年7月に同社の買収が完了しました。丸紅・ガビロン両社の穀物取扱高は現在約6,800万トン規模であり、カーギル社などの穀物メジャーに迫る取扱量を誇っています。
今回の買収劇で大きな役割を演じたのは、やはり丸紅の個々の社員が長年積み上げてきた経験と情報です。長年の経験・情報の蓄積があるからこそ、今回のガビロン社買収劇でもライバルより早く動き、より魅力的な提案ができたのです。これは一朝一夕でできるものではありません。結局のところ、総合商社の力の源は人材なのです。

非鉄金属ビジネス
トレードでの知見が投資を生む

総合商社の両輪であるトレード(商取引・貿易、利益は手数料等)と投資(利益は配当とキャピタルゲイン)がいかに相乗効果を発揮しているか、当社の銅ビジネスを例に説明してみましょう。

1. 銅精鉱輸入で得た知見をもとに、チリの銅鉱山に投資

長い間、丸紅の銅ビジネスの使命は「日本の非鉄金属メーカーのために銅精鉱(銅の原料)を海外から輸入すること」でした。そのような中で、丸紅は原料確保を目指す日系非鉄金属メーカーと組んで海外銅鉱山に投資し、権益を確保するなどの経験を積んできました。但し丸紅も含めて総合商社の投資シェアは小さく、日系非鉄金属メーカーとのお付き合い的色彩が強かったことは否めません。その頃の総合商社の役割は、①投資リスクの分担、②非鉄金属メーカーへの銅精鉱輸入(トレード)、が中心でした。

しかし2000年代に入り、新興市場国、特に中国が高成長を始めると、銅の需要が増え、銅精鉱の価格も急上昇を始めました。トレードを通じこの状況を察知した丸紅は、2008年にいち早くチリのエスペランサ銅鉱山(※1)に約2,000億円をかけ、単独で30%もの投資を行い、持分利益という形で銅価格上昇のメリットを享受することに成功しました。日系非鉄金属メーカーや総合商社による海外銅鉱山への大規模投資はその後のトレンドとなりますが、その先鞭をつけたのが丸紅です。丸紅が他社に先駆けることが出来た理由として、1990年代のチリのロスペランブレス鉱山への出資があります。このロスペランブレス鉱山のオーナーであったアントファガスタ社が、エスペランサ鉱山のオーナーでもあり、そのつながりを活かし、いち早く情報をつかむことが出来たのです。但し幸運だけではありません。ロスペランブレス鉱山へは丸紅以外にも複数の日本企業が参加しており、その中で丸紅が抜け出せたのはやはり普段からの準備が周到だったからと言えます。

※1:エスペランサ銅鉱山は、2014年にエルテソロ銅鉱山と統合し、センチネラ銅鉱山と改称しています。

2. チリからアジアへ銅地金を三国間輸出

また古くから丸紅は日本の非鉄金属メーカーが製造した銅地金(銅の製品)をアジア向けに輸出する業務にも従事していました。そしてアジア向け銅地金輸出を続ける中で、丸紅はアジアの銅需要の強さに着目していました。(下図参照)背景には、①円高を嫌った日系メーカーのアジア移転、②アジア地場企業の急成長、があります。
そこで丸紅は日本の非鉄金属メーカーからではなく、チリからアジアへ直接銅地金を輸出することを始めました。1990年代はチリの銅鉱山に融資する見返りとして銅地金を割り当ててもらうというスタイルでしたが、それにより丸紅はチリからアジアへの銅地金輸出の経験を積み、アジア市場における知見を高めていきました。
現在では、丸紅は投資したチリの銅鉱山にて、共同パートナーとして自ら銅地金の生産にも携わっており、過去の知見を活かしながら、アジア向けに銅地金の輸出を行い、輸出量を大きく伸ばしています。

3. トレードで得た知見で投資の質を改善。非財閥系ならではの柔軟さも。

「メーカーでない丸紅がチリの銅鉱山に投資して一体どんな機能を果たせるのか」という疑問が沸くと思います。確かに丸紅はメーカーではありません。しかし丸紅には長い銅ビジネスの中で蓄積した川上(銅鉱山)から川下(銅消費者)にまで及ぶ知識があります。例えば銅製造過程において設備稼働率が上がらない場合、普通の投資家であれば投資先企業の言い分を鵜呑みにするしかありません。しかし丸紅の場合は投資先企業の言い分を鵜呑みにせず、実際現場に足を運び、改善提案を行うことができます。このように長いトレードの歴史の中で培った知識が、丸紅の投資の質向上に一役買っているのです。
また丸紅がエスペランサ銅鉱山にいち早く大規模投資できたことや、チリからアジアへの銅地金の三国間輸出に踏み出せた理由のひとつに、丸紅が非財閥系であり、日本国内の財閥系非鉄金属メーカーとのしがらみが少ないことがあります。一般に非財閥系であることのデメリットばかりが注目されがちですが、実際にはこのような非財閥系ならではのメリットも有るのです。

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