Person

生まれ変わっても、もう一度丸紅に。
世界中で挑んできた経験を、
己の強さに変えた35年の歩み。

総合職
河村 肇
プラント本部 本部長
常務執行役員

商社人生の原点
「バカヤロー!魂を込めて仕事しろ!」。

繊維・紙パルプなどの産業プラント、交通・インフラプロジェクトまで、世界中のさまざまな国、地域でプロジェクト、ビジネスを展開する丸紅のプラント部隊。2013年4月、河村は、約350人の人員を擁するプラント部門(現プラント本部)を指揮する部門長に就任した。

今、プラント部隊の頂点に立つ河村にももちろん、新入社員時代はあった。そして現在に至る商社人生の中で最も鍛えられた思い出もここに戻る。「鬼軍曹とも言える上司に厳しく鍛えられる苦しい毎日でした。いつもバカヤロー!と怒鳴られていました」。口癖は「魂を込めて仕事をしろ!」。その意味に気づいたのは鬼軍曹が海外赴任で河村の前からいなくなってからだった。インドでのプラント入札という大きな案件に初めて一人で対応することになったとき、「鬼軍曹ならどうしただろう?」。河村は、新人の頃からずっと背中を見続けてきた鬼軍曹の仕事を必死に思い出し、3日間徹夜して真剣に脇目も振らず見積書を作り上げた。「受注が決まったとき、鬼軍曹の教えがどれだけ大きな意味を持っていたかわかりました。確かに私は魂を込めていたのですから」。この教えは河村の原点となり、現在に至るまで文字通り魂を込めて仕事に取り組むことになる。

ビジネスの信念
「プロジェクトはマイベイビー」。


入社以来、プラント一筋で歩んできた河村は、世界各地でさまざまなプロジェクトに携わり、他の職場では体験できない多くのエキサイティングな経験を重ねてきた。入社3年目にはインドの山奥にメーカーの一団を従え、丸紅代表としてスピーチ。切羽詰まれば何とかなると腹をくくった。米国駐在では英語で食事の注文もできない状態からスタート。しかし2年後には、弁護士や会計士との電話会議で、自身の考えを主張できるまでになった。軍事政権下のミャンマーでは、現地の法制上、プラント建設代金の回収に不可欠なセキュリティスキームの構築ができないことが発覚するも、弁護士と一緒に時間をかけて粘り強く交渉。最終的にはミャンマー政権に法制の改正を認めてもらい、当社が満足する代金回収スキームとセットでのプラント受注を成功に導いた。先進国、新興国、さまざまな政府関係者、国営や民間企業、そのあらゆるニーズに向き合い、マネジメントし、ファイナンスを調達してプロジェクトを実行してきた。完成させるまでには、これでもかというほどの困難な局面が訪れる。当然、大変で辛い。それを河村は「子どもを産んで育てるようなもの。」という。だから「プロジェクトはマイベイビー」。その思いでやり抜くから、完成した暁にはパートナーと一緒に抱き合って涙して喜ぶ。中途半端ではなく、とことんハメを外して喜び合える。「マイベイビーをいっぱいつくりたいなら、何でもやる、どこへでも行く、という覚悟を持ってほしい。そして文字通り身を粉にして働く。そうすれば、自分のため、会社のため、日本のため、世界のために、価値あるベイビーを自分でクリエイトできるようになる」。それが河村流の「魂を込める」という信念だ。

経験という宝物
「普通の人ができないような経験こそ積むべき」。


河村にとって貴重な経験がある。2000年当時、プラント部門(現プラント本部)で不採算事業が発生し、河村は債権回収と事業リストラの組織に配属された。「全く自信はなかったですが、しかし誰かがやらなければいけないのなら、私がやってやる、と」。河村は3つのことを考えた。「自分が一番うまくやれると思い込むこと。普通ではできない経験を与えてくれる仕事に感謝すること。少しでも損を減らしたら、それはプラスなんだ、という発想を持つこと」。仕事というのは、常に前向きな仕事だけではない。後ろ向きの仕事もある。そして、取り組んでみると「苦しさの裏側には必ず楽しさがある。それは自分に大きな価値をもたらす」ということを実感したのだ。「渦中にいるときは確かに辛い。でも発想を変えれば、そうした経験はしたくてもできるものではない。普通の人ができないような経験こそ積むべきなのです。いろいろなことが見える。普通の社会人が20年かけて経験することを商社なら5年、場合によっては3年でできるかもしれない。それくらい密度が濃い」。そこから自分で学び、自分のセンスを磨け、というのが河村の若手の育成方針だ。そして入社後、新人がその日からセンスを磨く方法がある、と河村は言う。「上司の背中を見ること。いいところを盗む。変だと思ったら反面教師にして自分は変えればいい。少なくとも上司は自分より経験を積んでいる。その経験を学ぶことができる」。

「経験が生命線」。それは、いくつもの難局を乗り越え、その過酷な経験を「己の強さ」に変えてきた河村の、偽らざる実感であり若い人へ贈る言葉なのだ。

トップの詩吟
「強く、謙虚に」。

本部長となった河村には日課がある。それは本部内の“散歩”だ。1日に何度も本部内を巡り、部下たちにざっくばらんに声をかける。「あの案件、どうなっている?」「おっ、楽しそうだな、何かいいことがあった?」……。「部下との距離感を縮め、本部の風通しを良くし、私に声が届くようにしたいんです。上司や課長がいない、部長がいない、困った、と。だったらいつでも私の部屋においでと言っています」。現場のリアルな声が集まること、それは、本部長として判断をするときのべース、選択肢を増やしていくことにもつながる。唯我独尊には陥らないように、それが、河村のスタイルだ。「自分の経験だけに基づいての判断では、読み間違う可能性もあります。幅広い判断のベース、選択肢の中で、自分が一番腹に落ち、納得感が持てるような方向性を見つけ、決断しています」。尊大にならず謙虚に。しかし一旦、決断したらブレない。営業本部として約束した利益は必ず達成する。「強く、謙虚に」、これが河村の覚悟だ。

「もし生まれ変わっても、もう一回、商社に、そして丸紅に入ると思います。そしてプロジェクトに携わりたい。それくらい楽しいからね」、そういって河村は笑う。それが、丸紅のプラント本部で、山あり谷あり、艱難辛苦、愉悦と感動に満ちた濃密な年月を経験してきた河村の、この仕事への想いなのだ。


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