
できないことは、みんなでやろう。
米国、ブラジルで展開する
アグリ事業
PROJECT OUTLINE
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POINT.1
米国の農業資材販売会社、
Helena社の競争優位性を活かす。 -
POINT.2
ブラジル・Adubos Real社の買収。
共に「第二のHelena」を目指す。 -
POINT.3
農家を支える情熱が
世界の食料問題の解決に
貢献する。
Helenaで培ったノウハウを活かし、
世界の農業生産者と農業の発展に貢献する

TOPIC.1取り組みの背景
海外農業資材リテーラーの保有により、
農業生産性の向上と食料供給の安定化を目指す。
現在、食料を巡る農業生産現場での課題を教えてください。
中山 現在、世界人口増加による食料需要は増加の一途を辿っており、また、新興国を中心とした食生活の変化も食料需要に変化をもたらしつつあります。同時に、環境問題や食の安全についての関心も増していくとされています。しかし、農業に活用できる土地や資源は限られており、社会の期待に応えるためには、より生産性が高く環境に配慮し、安全性を確保した農業生産が求められています。こうした環境下、丸紅のアグリ事業は、世界各地で農業資材の販売業を行う事業会社や提携先を通じ、「農業生産者のニーズを深堀り」し、「作物の栽培活動に最適な農業資材や技術サービスを提供」することで、農業の生産性と農家の収益性を高め、持続可能な世界の農業の発展に貢献することをミッションとしています。
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それら課題に対してどのような取り組みを進めているのでしょうか。
天野 丸紅のアグリ事業は、世界各地で農業資材の製造・販売、精密農業サービスなどを展開しています。中でも主要な事業が、1987年に丸紅が買収した米国のHelena Agri-Enterprises, LLC(以下、Helena社)です。Helena社は、米国内に約500の販売拠点を有し、農業資材事業に特化した営業・技術・農学・管理それぞれの専門家からなる、約6000名の従業員を擁する米国トップクラスの農業資材販売会社です。丸紅は、Helena社をはじめとした、海外農業資材リテーラーの保有により、グローバルに農業資材事業の拡大を進めています。この戦略により、農業の生産性を高め、食料供給安定化への貢献を目指しています。
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TOPIC.2丸紅だけでは「できないこと」に
どのように向き合ったか?
「農家だけではできないことを、ともに解決する」ために、
「共通言語」によるコミュニケーションが重要。
Helena社の特徴や強みを教えてください。
中山 「農家だけではできないことを、ともに解決する」。丸紅はそんな思いを共有し一緒に歩んでくれる企業を世界各地で見つけ、仲間を増やそうとしていますが、その代表格がHelena社です。商品起点ではなく顧客起点で機能性の高い商品・サービスを開発し、それを顧客である農業生産者一人ひとりに寄り添ったコンサルティング営業で販売することで、全米各地の顧客に対する付加価値の創出に取り組んでいます。拠点ネットワークの構築・拡張に継続的に取り組み、多種多様な農業生産者のニーズを深く把握することで、高い競争優位性を確保しています。そうした取り組みの結果、世界のアグリビジネス市場の最先端にある米国において、トップクラス(業界第2位)の農業資材販売会社として、業界内に確固たる地位を築くに至っています。
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「みんなでやろう」の視点での取り組みを教えてください。
天野 Helena社は自社でラボを構え、科学技術・知見を駆使して独自商品を開発しています。たとえば、農薬の効果を様々な側面で補強する展着剤。これを農薬散布時に使うと、通常の農薬散布よりも高い効果を得られ、生産性の向上を実現します。ほかにも、顧客ごとに養分の配合が緻密に計算された肥料や、種子の保護や成長を促す高付加価値製品などを提供しており、機能性の高い資材を地域や作物特性に合わせて自社で開発し取り扱うことで、競争優位性を高めています。農地データに基づく資材提案にもHelena社はいち早く着目し、現在は、蓄積した知見を統合させた独自のシステムを用いて、一人ひとりの顧客に適したソリューションを提供しています。こうしたテクノロジーの活用以上に、Helena社の最大の特徴は、「真心をもって農家に寄り添う姿勢」。その姿勢への共感が私たちのベースにあります。
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プロジェクトに携わった経緯、現在の仕事内容を教えてください。
中山 2018年の入社以来、東京本社でHelena社の独自商品を主とした農業資材のマーケティング・セールス業務に携わりました。実際の取引で主体的に商材を取り扱い、取引先の専門家や訪問先の農家の方々から農業生産や農業資材業界に関する多くの知見を学びました。その後、入社5年目を迎えるタイミングで念願であったHelena社へ出向する辞令を受けました。当時駐在していた先輩よりも一回り若いタイミングで出向する機会を得ることができたので、「何としてもチャンスをものにしてみせる」という気概に満ち溢れていました。
天野 私は、23年1月に米国の穀物トレードの事業会社から帰任した後、Helena社に関わることになりました。米国での現場・事業開発経験を活かすこと、また将来的には専門性を軸に新たな事業創出に貢献できる力を身につけることを期待されてのアサインだと感じています。Helena社が培ってきた知見・ノウハウをグローバルに展開することで、食料問題の解決につなげていくことに、大きな責任を感じました。
中山 現在、米国のHelena社へ出向し、自社独自商品(肥料、農薬、添加剤など)の開発・マーケティングを行う「Helena Products Group」という部署に在籍し、海外営業を担当しています。Helena社が「米国の農業生産者に対するトータルソリューションプロバイダー」として長年培ってきた、リテールビジネスのノウハウと独自技術を現場で学びながら、その知見を活用し、中南米・カナダ市場向けにHelena社独自商品の海外展開を行っています。
天野 現在は、Helena社とAdubos Real社の経営支援業務を担当しています。Adubos Real社は、ブラジルで農業資材の販売を手がける企業であり、「第二のHelena」を共に目指す仲間を増やしたいという丸紅の想いと共感してくれたブラジル現地事業会社の方々の協力のもと、2019年に丸紅の出資が実現しました。買収時に10カ所だった販売拠点は今では60カ所を超え、今後さらなる拡大を目指しています。私は、特にAdubos Real社の経営戦略に沿った買収戦略の推進と差別化戦略の実施に向けた、丸紅社内合意形成と資金調達・管理等を中心に携わっています。
ミッションを遂行するなかで、印象に残っている取り組みを教えてください。
天野 印象深いエピソードは、Adubos Real社による買収案件です。東京から関わりましたが、決裁取得の過程で、現地・丸紅社内とのチームワークと、専門的な知識や戦略・現地の状況を関係者全員が臨場感を持って共通の理解を得ることの重要性を学びました。私は、米国出向時に現場で様々な経験(例えば穀物倉庫の掃除や積み込みなどを1から)をさせていただきましたが、顧客である農家と、そこに価値を提供する事業会社社員及び駐在員の方々と、管理部門を含む東京の我々の間には大きなギャップがあります。本質は現場でいかに農家に価値を提供するか、だと思います。しかし、東京にいるとどうしてもその本質的な観点が抜けてしまいがちです。論点と目的を絞り、議論が逸れないようなコミュニケーションが非常に大切だと感じています。
中山 多種多様な農家のニーズや各国の市場トレンドを理解するためには、業界人としての専門性や、文化や使用言語の異なる環境でのコミュニケーション能力が求められます。その際、現場の人たちと共通の言語で対話できることが重要だと考えています。担当する中南米やカナダの現場の人たちとの対話においてもそうですが、出向先においても、Helena社に大勢在籍する農業の専門家や、リテール事業の成長に貢献してきたエキスパートと共通の言語で対話することを心掛け、信頼関係を自分なりに築くことで、多くの方々から日々協力を得ながらミッションに取り組んでいます。

「丸紅だけではできないこと」を実現するために大切なことは何でしょうか。
中山 私が日々の業務で実践している「共通言語」で対話することが、「丸紅だけではできないことを、みんなでやる」ために必要なことだと思っています。Helena社のメンバーは農業資材のプロフェッショナル。自身も農業資材のプロの自覚を持って対応することが求められます。プロである私たちは、「農家が抱える課題を解決するため」に存在しています。本質的な課題を把握して、最善の解決策を見出していくためには、思考や対話において高い解像度が必要であり、高い視座や広い視野こそが解像度を高めていくと考えています。高い解像度を持った共通言語で語り業務を遂行していくことが、「みんなでやる」の実践に繋がると思っています。
天野 「共通言語」という概念は非常に重要だと思います。実際の対話だけでなく、現地にしかない制度や商習慣もある。その理解なくしては、せっかく各人が強みを持ち寄っても、「みんなでやる」ことは叶いません。加えて大事なのは、現場と本社で距離と時差、情報格差がある中で、現地及び社内との密なコミュニケーションと迅速な意思決定です。現場と本社にどうしても生まれてしまう乖離を、密なコミュニケーションで埋めていく、その地道な取り組みが「みんなでやる」ためには、非常に重要だと感じています。

TOPIC.3プロジェクトの今、そして意義
トータルソリューションプロバイダーとして、
農家を支える情熱が「世界の食料問題」を解決する。
プロジェクトの今後の展望を教えてください。
中山 農業生産者のニーズや農業資材業界の技術革新は日々変化していますが、Helena社も米国市場での競争に勝ち抜くため日々進化し続けています。「People…Products…Knowledge..」というコーポレートポリシーを持って変化し続けるHelena社の成長の軌跡に触れ、成長の根幹にあるHelena社の有形無形の財産を丸紅として他市場で活用していきたいと考えています。それによって、世界各国における「農業生産者に対するトータルソリューションプロバイダー」となることを今後も目指していきます。そのためにも、丸紅がハブとなって顧客である農家にしっかり向き合うことが必要だと思っています。
天野 今後も各事業会社の差別化、拡大のためにHelena社の知見とAdubos Real社の市場拡大を組み合わせ、持続可能な農業への貢献を進めていきたいと思っています。Adubos Realに続く機会を見つけるべく、ワークしているメンバーもいます。また丸紅グループの仲間には、欧州の大手農業資材リテーラーや、日本・東南アジアなどに肥料・農薬の製造販売事業会社がおり、グローバルに農業資材事業拡大を進めています。将来的には既存事業会社を核として、より大きく、質の高いアグリ事業をよりグローバルに展開することを目指しています。
今回のプロジェクトの意義を教えてください。
中山 世界の人口は、2050年までに90億人を突破すると予想されています。深刻な食料不足を回避するには、イノベーションと、農家を支えたいという情熱が不可欠です。私が現在出向しているHelena社は、アグリビジネスのトップランナーとして、業界全体を引っ張っていける企業です。Helena社の経験・ノウハウを広く展開することで、丸紅グループのアグリファミリーをさらに増やし、Helena社のように共に大きく育っていくことは、農業生産性の向上に寄与し、「世界の食」を支えることに繫がっていくと考えています。
天野 私たちが向き合っている顧客は農家です。安定した「食」の提供に向けて、農家の収益向上、生産性向上に農業資材が果たす役割は大きなものがあります。したがって私たちは、農家にどのような価値を提供できるかを常に追求していかねばなりません。その取り組みを世界中で展開していく先に、食料不足などの「食」を巡る問題の解決が見えてくると思っています。その実現のためにも、世界各国の事業会社と「みんなでやろう」と考えています。
