チリ銅鉱山・
拡張プロジェクト
金属資源分野
世界的な脱炭素化や経済成長に伴い供給不足が見込まれる、銅の安定供給を目指す。チリのセンチネラ銅鉱山における新規の選鉱プラント建設を通じて、生産能力を大幅に拡張し、「責任ある生産」に貢献。

銅の安定供給で社会・経済の発展や脱炭素社会の実現に
貢献する、持続可能な鉱山事業。
課題点
Challenge
- 銅需要の更なる増加による長期的な供給不足リスク
- 銅鉱山の品位低下や資源枯渇による生産量減少
- 環境許認可取得難化や地理的制約を伴う新規鉱山開発
- 大型投資に伴う資金調達
ソリューション
Solution
- 拡張による生産能力増強で銅の安定供給に貢献
- Antofagasta社との強固なパートナーシップを基に安定操業体制を構築
- 政府系・民間金融機関を引き込んだ約3,700億円の資金調達を実現
- 操業用水100%海水利用・再エネ利用など環境・コミュニティーに配慮した持続可能な開発
- 関係者の連携と信頼を基盤に複雑な利害調整とプロジェクト推進を実現
プロジェクトの進捗・今後の展望
Project Progress
and Future Outlook
2023年12月に拡張の投資意思決定を行い、プロジェクトマネジャーを中心に建設を開始。2027年の銅精鉱生産開始を目指す。生産能力増強後には、センチネラ銅鉱山全体で年間約14万トンの銅を増産し、生産量で世界有数の銅鉱山となる見込み。副産物である金の生産量も、チリ有数の金鉱山に分類される規模となる。更に、将来を見据えた新規プロジェクトの仕込みも並行して進めることで、優良資源確保と「責任ある生産」による持続可能な社会への貢献を強化していく。


金属部門 銅鉱山事業部
2010年入社 経営学部経営学科卒
菅原 卓也
「脱炭素社会を支える“赤い金属”、銅の安定供給を実現する」
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Q1.担当業務・仕事のやりがいや面白さ
私は、チリ共和国(以下、チリ)・センチネラ銅鉱山の生産能力を倍増する拡張プロジェクトにおいて、開発計画のデューデリジェンス、プロジェクトファイナンスの組成や鉱床買収、建設管理など幅広い業務に携わってきました。資源ビジネスは非常に規模が大きく、30年以上にわたってコミットし続けることが前提となる事業です。開発費用はUS$44億(当時の為替レートで約6,500億円)と巨額で、マインサイトには最大で6,000人以上が建設に従事します。
そのなかで私が大切にしていることは、信頼関係の構築です。資源開発のプロフェッショナルである優良パートナーと相互理解を深め、事業価値を最大化するために地質や採掘、プロジェクト、金融機関、弁護士などさまざまな分野の専門家と連携しながら開発を進める必要があります。その過程では、技術やプロジェクトの全体像、経済性、契約内容を深く理解し相手の求める期待を超えられるよう取り組む姿勢が大事だと思います。
印象に残っている取り組みとしては、4つの政府系金融機関と4つの民間金融機関から総額US$25億(当時の為替レートで約3,700億円)を調達したことが挙げられます。1年以上にわたる交渉を経て、関係者全員が納得のうえで合意に至り、スケールの大きな事業が形になった実感が湧きました。後日、その成果が新聞で報じられたときには、改めてこの仕事のスケールの大きさとやりがいを感じたことを覚えています。 -
Q2.プロジェクトの課題
銅の供給が抱える最も大きな課題は、銅需要の増加に対する安定した供給体制の確立です。銅はスマートフォンなどの身近な電気製品からインフラまで使用され近代生活に欠かせない金属ですが、既存鉱山の品位低下や資源枯渇に加えて、新規鉱山の開発は難航しているので、長期的な供給不足が懸念されています。とくに銅精鉱の全量を輸入に依存している日本は、サプライチェーンの強靭化が急務です。
一方で、巨額な開発費用を必要とするプロジェクトへの投資意思決定は、将来の不確実性が高い状況では容易に進められません。本拡張プロジェクトは、当社と英国・Antofagasta社が共同運営するセンチネラ銅鉱山で長年構想してきたものです。しかし投資意思決定前に、チリで社会騒乱が起こり、憲法改正や税法制度変更のリスクが浮上し、投資判断を見極める難しさに直面。プロジェクトファイナンス組成が大きな課題の一つとなり、開発費用の資金調達について協議を重ねました。
国の政情や世界経済情勢のうねり、それらがプロジェクトに大きな影響を最前線で感じられたことは、非常に面白く貴重な経験です。課題を一つひとつ丁寧に整理し、関係者と対話を重ねながら乗り越えていくプロセスは困難を伴いましたが、同時に挑戦しがいのあるものでした。 -
Q3.丸紅ならではのソリューション
丸紅が長年培ってきたAntofagasta社との強固なパートナーシップは、本プロジェクトの大きな推進力となりました。資源ビジネスは大規模かつ長期的な事業であり、関係者間の信頼なくして成功はありません。同社とひたむきに取り組んできた人間関係の積み重ねがあったからこそ、開発の投資意思決定やプロジェクトファイナンスによる資金調達、鉱床買収など難航する交渉局面においても、関係者が納得できる形で合意に至ったと感じています。
また、丸紅の総合力も大きな強みです。技術のエキスパートや最前線のマインサイトで働く当社社員、金融や法務、環境など各分野の専門家が幅広い知見を持ち寄り、数々の課題を解決してきました。プロジェクトファイナンス組成においても、政府系金融機関との「Government to Government」の枠組みづくりや、複雑な契約条件の調整を関係各所と連携しながら進められた背景には、総合商社である丸紅ならではの強みがあると思います。 -
Q4.丸紅で働く魅力
丸紅の魅力は、「人」と「チャレンジを後押しする風土」です。丸紅には、多様なバックグラウンドを持つ人財が一丸となり、共通の目標に向かって突き進む力があります。入社時は一人でできることも限られているかもしれませんが、自らプロジェクトを動かす責任感を持つ社員には、積極的に挑戦の機会を与えてくれる風通しの良い会社です。年次や役職に関係なくチャレンジできる環境があり、チームは仲が良く、互いに尊敬し合える魅力的な組織だと思います。
私自身過去チリのマインサイトにて、周囲のメンバーに日本人はいない環境で仕事をすることで国や文化を超えた多様な価値観に触れ、経験の幅が広がる大きな体験をすることができました。会社として「個」の成長を真剣に考えてくれ、それぞれが専門性を高めつつチームで成果をあげる姿勢が根付いていることも、丸紅らしさだと感じます。
「人と人」がかかわるなかで相手の期待を超えられるよう取り組み、「人こそがプロジェクトを完成させる」という実感を持ちながら働くことができ、日々成長できる会社です。