総合商社最大を目指す
北米モビリティ事業の展開
金融 × 自動車分野
丸紅の北米モビリティ事業は1958年、日産自動車の車両の輸出販売からスタートした。以来、新車・中古車・商用車の販売事業からレンタル・リース、部品卸売、販売金融など米国における自動車バリューチェーンを幅広くカバー。事業を拡大し、知見とネットワークを構築してきた。2024年、5年間にわたる市場調査と企業の発掘、パートナー連携を経て、新たな事業展開の足掛かりとなるフリートマネジメントへ参画。巨大自動車市場である北米のBtoB領域を広くカバーする同事業への参画を足掛かりに、総合商社最大の北米モビリティプラットフォーム構築を目指す。

北米の自動車産業という世界有数の巨大市場で
一歩一歩、信頼を獲得しながら「総合商社最大」への道を進む。
課題点
Challenge
- フリートマネジメント領域ではスケーラビリティを有するプレイヤーが限定的で、有望な出資先候補が限られる
- 北米自動車業界におけるこれまでに築いてきたネットワークや事業への理解、ならびに丸紅としてのプレゼンスがなければ、新規出資先への接点創出は困難
- 出資規模が大きいため、投資の意思決定に必要な問題点・解決方法に関する徹底的な議論
- 出資交渉のあらゆる過程や局面で迅速な判断が求められ、スピード感ある対応が不可欠
- 出資後はWheels社における、丸紅としてのプレゼンス確立が必要
ソリューション
Solution
- 協業実績と北米既存事業の知見・ネットワークを活かした出資機会の獲得と有力パートナーとの連携
- 出資過程では、現場駐在員・本社営業部員・コーポレート部門全体での協力体制構築で迅速に対応
- 出資後も、出向者によるWheels社内のネットワーク構築のみならず、東京本社からの支援も得ながら、Wheels社内での信頼と存在感を向上
- 車両のライフサイクル全体をカバーする事業への参画で、既存事業とのシナジーを強化
プロジェクトの進捗・今後の展望
Project Progress
and Future Outlook
2024年7月に全米No.1のディーラーグループであるLithia社とともに、全米No.1のフリートマネジメントカンパニーであるWheels社への共同出資を実現。BtoB領域において、車両の販売から売却までの全てのライフサイクルをカバーする同社に、丸紅は約900億円を出資。2025年4月時点でWheels社に3名の社員が出向。ストラテジックパートナーとして同社の成長をサポートする。中長期的には、Wheels社の事業と丸紅の既存事業の掛け合わせ、Wheels社を基盤に周辺領域へ参画していくことで、丸紅の北米モビリティ事業を総合商社最大規模に成長させることを目指す。


金融・リース・不動産部門
MAI Holding IV出向
2013年入社 商学部卒
朝倉 康智
「総合商社ならではの規模と独自性で“楽しい”仕事をする」
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Q1.担当業務・仕事のやりがいや面白さ
私は入社後5年間、経理部で経験を積み、その後、希望していた自動車部へ異動。そこで自動車金融事業に携わるようになりました。2019年からは北米の中古車販売金融を扱う企業へ出向し、並行してフリートマネジメント事業への出資検討を主導。約4年にわたり案件発掘やデューデリジェンスを重ね、出資に至りました。今はWheels社の成長戦略の策定など経営に関与しながら、プロジェクトベースで事業のサポートも行っています。
プロジェクトの一つとして、カナダ事業の戦略策定とその実行に携わっています。Wheels社としてカナダ事業に課題があることはわかっていましたが、手が回っていませんでした。現地へも足を運び、社内の関係者へヒアリングし、最終的には営業トップを巻込んで経営会議における提案を実施。無事に社内の優先プロジェクトとして承認され、日々事業の改善に取組んでいます。北米モビリティの最前線で現場を目の当たりにしながら事業をリードしていく。苦労はありますが、純粋に楽しいですね。 -
Q2.プロジェクトの課題
出資に至るまでの道のりは非常に長く、北米フリートマネジメント事業に参画すべく、全米で開催されるカンファレンスでのネットワーキング、中小規模のフリートマネジメントカンパニーにも直接アプローチしての出資交渉、グリーンからの事業開発など、あらゆる取組を実施しました。一度、大型のM&A機会を逃してしまうなど、途中で頓挫しかねないタイミングも何度もありました。
出向直後の課題は、Wheels社内における丸紅のプレゼンスを高めること。「社員でもない“謎の”日本人」という社員からの警戒心を解くために、コミュニケーションには工夫を凝らしています。カナダのプロジェクトでも現地に赴き、社員の声を聞くことで信頼関係が構築された結果として、経営から承諾が得られたと捉えています。人間関係という土台づくりと、総合商社らしい産業全体を俯瞰した提案。この両輪を回していくことで、新たなチャンスを掴むための行動を重ねていくことが重要だと考えています。 -
Q3.丸紅ならではのソリューション
Wheels社への出資が実現した背景には、丸紅として北米モビリティ事業に取組んできた歴史と蓄積されたプレゼンス・ノウハウ、そして現場の声をしっかり聞いてくれる会社の風土があったからこそだと考えています。約5年にわたって、何度もチャレンジをさせてもらえる環境がありました。金額も大きく、プレッシャーはそれまでの経験とは比にならないものでしたが、東京本社と米国拠点のチームが一体となって臨んでくれたからこそ実現させられたものです。
出資が決まる直前に、偶然にも社長とお会いする機会がありました。そこでこの案件に関する質問に回答させていただいたのですが、現場社員の声が社長にしっかり届く会社なんだ、と強く感じた場面でした。出向後も課題ばかりですが、事業への参画の段階から一緒に動く上司に加え、東京本社からのバックアップにとても助けられています。一人ではなく、部門や会社と一体になって動いているという感覚が常にあります。 -
Q4.丸紅で働く魅力
一人ではできない、大きな事業に挑戦できること。そして何より、その挑戦を楽しめる環境があること。それが、私が感じている丸紅で働く魅力です。私は周りの方々に恵まれていて、特に北米モビリティ事業を一緒に進めている上司からは多くのチャンスと裁量、そして手厚いサポートをいただいています。印象に残っているのは「仕事は、やるからには楽しい仕事をしたい。楽しむには、一生懸命やるしかない。一生懸命にならないと楽しくはならない」という言葉。自動車業界のなかでも最大規模の市場である北米に身を置きながら、今まさにその言葉の意味を実感しています。
北米に赴任して様々な企業・人と会うなかで、日本の総合商社の独自性にも気づきました。日本の総合商社の歴史と、世界各国での幅広い事業展開は、それだけで興味を持ってもらえる稀有な存在だと感じます。そんな環境で、これからも「楽しい」仕事をしていくことが、私の目標です。

エアロスペース・モビリティ部門
MAI Holding IV出向
2009年入社 経済学部卒
富井 伸介
「事業部全体でバッテリーを組んで臨む新領域の拡大」
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Q1.担当業務・仕事のやりがいや面白さ
2024年7月に出資が完了してから、Wheels社に出向し、事業支援を行っています。Wheels社の経営マターとなっているプロジェクトに参加するほか、Litiha社とも定期的に打ち合わせを設け、Wheels社との事業シナジーを生むためのサポートもしています。
中長期的な視点で、丸紅の既存事業との連携や周辺領域への展開の可能性を探ることも重要なミッションです。
北米の自動車業界は本当に奥深く領域も広い。いまだに知識不足・経験不足を感じる場面も多いですが、丸紅の北米モビリティ事業の未来をつくる重要なプロジェクトを担当するやりがいは大きいです。この魅力的なマーケットで丸紅がいかに「面白い」存在かを伝え、新しい可能性を手繰り寄せることができるか。チャレンジングで刺激と学びのある環境です。 -
Q2.プロジェクトの課題
このプロジェクトには、出資前の2023年から携わってきました。出資完了までは日々変わる現地側の状況をキャッチアップし、東京側で適切な関係者に状況を共有、すぐに対応策を検討し実行。とにかく細やかに状況を把握する必要があり、必然的に出張も増えていく日々でした。
無事に出資が完了してからはすぐに出向。Wheels社内で丸紅という存在はほとんど知られていないので、まずは知ってもらうところからのスタートです。地道にコミュニケーションを取り、人間関係を深める一方で、本業はストラテジックパートナーとして積極的に経営に提案すること。そのためには高度な専門知識が必要です。Wheels社のビジネスは幅広いのですが、それぞれの領域で深い専門性がなければ有効な提案はできません。迅速かつ専門性の高い提案とコミュニケーションが求められる環境で、プレゼンスを発揮していくことが目下の課題です。 -
Q3.丸紅ならではのソリューション
出資完了までのプロセスでは、営業部門・コーポレート部門のサポート体制に大いに助けられました。フリートマネジメントという新たな領域への大規模な出資案件だったこともあり、関係者の皆さんが主体的に取り組んでくれたことが、成功に大きく貢献したと考えています。私自身が直前まで経営企画部に所属していたことも、円滑な連携に繋がった一因かもしれません。
出向後の課題に対しては、東京本社との連携が有効な提案や解決策の検討に直結しています。たとえば部品事業の提案において、実際に卸売の現場に詳しい社員に話を聞き、課題や視点を共有してもらうこともあります。こうした具体的かつ専門性の高い知識に基づいた提案を重ねることで、少しずつWheels社員に丸紅のファンをつくっていく。そのために、当社が自動車・モビリティ業界で築いてきた歴史や知見、ネットワークを総動員している感覚です。 -
Q4.丸紅で働く魅力
丸紅の魅力は、「任せてサポートする文化」だと感じています。私にとっての一番大きなターニングポイントは、チリで自動車の卸売・小売・販売金融の事業を営む250名ほどの会社の事業経営を任されたことです。当時、私は30歳前後で、経営の経験はありません。初めての出向で異文化のなか、戸惑いながらも必死に経営と人に向き合いました。その際、東京からサポートしてくれたのが、Wheels社案件でも中心になっているメンバーでした。丸紅では現地で働く人をピッチャー、それを東京本社から支える人をキャッチャーと呼び、まさにバッテリーのような関係で案件に臨みます。時間を問わず相談ごとを投げかける私に、キャッチャーの2人は根気強く向き合ってくれました。経営状況は悪くはなかったですが、成長をさせることはできませんでした。ただ、案件を従業員と一緒にやり抜くことはできた。この経験における学びが、今回のプロジェクトでも活きていることを感じます。